SUPER FORMULA Logo

SUPER FORMULA Official Website

JapaneseEnglish

Special Issue

SUPER FORMULA PADDOCK REPORT “NAKAJIMA RACINGの速さは本物なのか?”
これまでの不振と開幕戦の速さの理由を探る……

SUPER FORMULA パドックレポート第1回
Yumiko Kaijima

日本最高峰レース、スーパーフォーミュラの激しい戦いの裏側で、牙を研ぎ澄ますパドックで、ささやかれる話題を鋭くレポートする「SFパドックレポート」。
今回取り上げるのは、小暮卓史とNAKAJIMA RACINGだ。昨年一昨年と不調が続いていたが、開幕前のテスト、そして開幕戦では全盛期を彷彿させる速さを見せくれた。果たして、その“速さ”の理由は? そして本当に“復活”したのか? そこを探ってみたい。

イメージ通りに走れなかった2010、2011年

photo

 記念すべきスーパーフォーミュラの初勝利、2013年の開幕戦を勝利したのは、伊沢拓也(No.40 DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。しかし、レースで揺るぎない“速さ”を見せつけたのは小暮卓史(No.32 NAKAJIMA RACING)だった。結果として、終盤のマシントラブルにより3位に終わったが、こう言い切っても誰も否定しないだろう。
 小暮は、一昨年の半ばから、本来持つ切れ味鋭い速さを見せることなく、低迷を続けていた。だが、今季はオフの公式合同テストからトップタイムを連発。“復活”を印象付けている。その“復活”が本物なのかどうか。これはファンならずとも気になるところだ。
では、なぜ小暮は昨年まで、低迷の時期を送っていたのだろうか。この時期のことを、小暮はこう振り返る

「2010年にも、タイヤが少し硬くなって違和感はあったんですけど、2011年はさらに硬いタイヤになりましたよね。ただ、(この年の開幕前の)テストの時は路面にグリップがあって、それまでとあまり変わらない印象を受けたんです。
 でも、実際には開幕戦から“何かこれはおかしい”という雰囲気があって。シーズンが進むと予選のポジションも良くなかったですし、何よりもイメージ通り走れなかった……」

photophoto

エンジニアもぶち当たってしまった壁

 小暮を担当するNAKAJIMA RACINGの田坂泰啓エンジニアも、小暮が詳細に説明するクルマの症状から、セットアップをいろいろと変更。何とか対処しようと努力を続ける。だが、その効果はなかなか現れなかったそうだ。

「結局、2009年に調子が良くて、“これで間違いないはず”というのがあったのかもしれませんね。今のセットアップは、その当時とは全然違いますから。もし今のセットアップを施しても、2009年とか2010年だったら、“こっちはダメだ”という方向。当時のタイヤであれば、コーナーの入り口からリヤが浮いて、グリップが無くなって、出口ではアンダーステアになる。そんなセットだと思います。
 でも、僕も小暮も方向性が分かっていなくて、“じゃあ、あの時に戻ってみよう”とか、そういうことを繰り返していた。できれば、突然良くなるのを夢見ていましたけど(笑)、ああやってもダメ、こうやってもダメ。その中で徐々に、イライラしながら、バネやスタビライザー、ダンパー、ジオメトリーなど、ありとあらゆる部分を試しました。でも、シーズンに入ってしまうと、テストができない分、なかなか正解が見つけられなかったんです。こっちに行ってみようかというところに“壁”があって、それもなかなか越えられなかった」

photo

2012年の第5戦もてぎで見えた光明

 そんな2人に転機がやってきたのは、昨年後半戦の第5戦もてぎだった。田坂エンジニアはついに壁を乗り越えて、それまで持っていたベースセットをがらりと変え、クルマを現場に持ち込む。そのクルマの動きに、小暮は手応えを感じたと言う。

photo

「そのもてぎ以前は、フロントの初期グリップがあるのに、その後スッポ抜けてしまう感じでしたし、ハンドルを切って行くとリヤのグリップも無くなって、コーナリング中のアンダー/オーバーが強かったんです。それに、こういう動作だとこうなるっていう自分のドライビングの感覚とマッチしていなかったんですよね。2006年から2010年までは、ずっと自然に乗れていたのに、2011年からは、そこがガラッと変わってしまって、『僕の感覚がズレちゃったのかな』って思っていたぐらいなんですよ。その時のクルマに合わせようとしても、速く走れませんでした。
 それが、去年の2回目のもてぎでは『あれっ?』って。今までダメだった動きが少ないぞって。ベースをガラッと変えて行ったんですけど。そこからは、そのベースセットを決め打ちにして、アジャストして行きましたけど、最終戦鈴鹿の予選前の練習走行でトップタイムが出て、そこから突き詰めて行きました。最終的には表彰台には上がれませんでしたけど、あそこで兆しが見えたと思います」

 この最終戦の後、11月のJAFグランプリ(富士スプリントカップ)直後には、昨年最後の合同テストが行われた。田坂エンジニアはここで先を見据えたテストに取り組んでいたと言う。

photo

「去年の最終戦のセットアップは、もてぎでようやく見えた方向に対して、タマ(改善策)を入れて行ったと言うか、スタビなのかバネなのか、どこでその方向に持って行くかという組み合わせでやっていて、まだ足りない部分もあったんですね。いわば暫定仕様だった。なので、11月の富士テストでは、それをさらに煮詰めるべく、(通常の富士ならローダウンフォースだが)ずっとハイダウンフォースで走らせました。そして、今年最初の鈴鹿テストでようやく人並みのタイムが出るようになったんです」

ビクビク出迎えた今年の開幕戦

photo

 ちなみに、今年もタイヤのスペックは変わっているが、タイヤ自身の性格は昨年までのスペックと似ていると田坂エンジニアは判断。セットアップに関しても、ようやく見つけた方向に沿って、進めているという。

「でも、開幕戦を迎えた時は、ハズしていたらどうしようって、ビクビクしていましたよ。次のオートポリスに関しても同じ。“これで間違いないはずだ”って、自分に言い聞かせてはいますけど、常にビクビクしています。だから、もしこれでグリップが足りなかったら、次はどうしようかって、もっともっと先を考えてやっている段階ですね。だから、(今は)あまり注目されたくないんですけど(苦笑)」

 ドライバーの小暮も「やってみないと分からないですけど、期待しています」という第2戦オートポリス。小暮卓史とNAKAJIMA RACINGが本当に復活し、チャンピオンシップに絡んでいくのか? 6月1日、オートポリスの走り始めで、小暮がどんな走りを見せるかに注目したい。

photo